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村上海賊の娘 上下巻
平均点 3.0点

総件数:1件


Seli Ogawa
日時 2014/11/12
評価
タイトル 例えるなら、3時間超の超大作ムービー
コメント 結論から言うと、まずまずの出来ではないかと思います。ただし、序章と第一章はかなり忍耐が強いられますのでご注意を。地の文も台詞も説明的な上に、日本語の間違いがやたらと多くストレスが溜まります。例えば、「しずしずと蠢く」という表現、この本で初めて目にしました。

この本が俄然、面白くなってくるのは、主人公である村上海賊の娘、景(きょう)が登場するあたりからです。台詞もハキハキとした現代口語に切り替り、変な表現も出てこなくなります。
上巻は、おおざっぱにいうなら、景の婚活物語です。目が大きくて背が高く、醜女という設定の景が、目の大きな女をもてはやしてくれるという地上の楽園(具体的には、泉州)を目指して、他人の迷惑も顧みず、周囲の人間をやたらめったら巻き込みなら、大暴走します。やり過ぎの感がなきにしもあらずなので、好みが分かれかもしれません。

そして、景と同じくらいの比重、あるいはそれ以上の比重で描かれているのが、闘う男達、村上海賊、毛利家、雑賀党、そして敵となる真鍋海賊、泉州侍の面々です。下巻は、ほぼ闘う男達の活躍で占められています。これまであまり描かれてこなかった海戦の様子が具体的に描かれているのが新鮮です。船と船との肉弾戦(?)の様子や海賊独自の戦法も斬新で面白いです。本作の中には陸戦も海戦も描かれていますが、敵、味方の実力が伯仲しているため、形勢が二転三転し、最後までどちらが勝つのか予想もつきません。
そして、最大の山場は、なんと言っても、海賊vs海賊の船戦です。非常に派手な戦闘シーンでありながらかなりリアルに描かれており、船の揺れや軋み、火や煙の匂い、そして海水の味までもが伝わってくるような迫力があります。余談ですが、この物語に出てくる安宅(あたけ)という和船は全長が50メートル以上もあるという大型の軍船です。壇ノ浦の戦いとはレベルが違います。
この戦闘シーンですが、とにかく長い!二転三転どころか、九転十転ぐらいするので、中盤が少しダレます。次から次へと息をつがせぬシーンが展開されるにもかかわらず、「まだ終わらないの?」と思ってしまうところは、3時間超の超大作ムービーを観ているよう。そのせいで、ラストシーンまで一気に駆け抜けられず、長い闘いに終止符が打たれたときも、登場人物と一緒になって「よっしゃーっ!」と快哉を叫ぶ気持ちにはなれませんでした。しかし、全体的にカラリとした作風ですので、何も考えずに読める娯楽作品を探している人にはオススメです。ただ、大味なので評価は三ツ星です。

景や男達の胸がすく戦いぶりとは別に、本願寺のために殉死する信徒たち、宗教集団の嘘と誠、戦国時代の男達に課せられた重責なども、全編を貫くテーマとなっていますが、心理描写はいずれも浅いです。しかし、昭和の歴史物に比べると、味付けがぐっと現代人好みになっている点がグッドです。

海賊達をはじめ、この物語に出てくる男達は羨ましいくらい自由で豪放磊落、闊達な精神の持ち主です。日本人の中にもこんな人がいたのね〜という感じです。

司馬遼太郎によると、日本人が画一的で柔順になったのは、300年続いた徳川幕府の施政のせいだそうです。堅苦しくて息苦しい縦割りの社会は、日本人から次第に解放的で自由な気風や反骨精神を奪っていったとか。

総件数:1件

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