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鬼の橋(再投稿)
平均点 4.0点

総件数:1件


Seli Ogawa
日時 2015/01/03
評価
タイトル 秀逸な和風ファンタジー
コメント 私ごとで申し訳ないのですが、何年も本を読んでいなかったので、面白い本を見つける嗅覚をすっかり失っていました。そんなわけで、ここ最近はベストセラー作品ばかり読んでいました。
そんなとき、図書館で偶然、この本を見つけました。パラパラとページを捲り数行読んだけで、「あっ!この本イケる!」と思いました。読んでみて−−やっぱりイケました。
今回のレビューは目立たないけれども、ひっそりと良い作品を書いていらっしゃる伊藤さんへの応援歌のつもりで書かせていただきました。

この作品は平安時代初期に実在した小野篁(おののたかむら)を主人公とする和風ファンタジーです。同時代の英雄 坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ)も登場します。

溺愛する妹を事故で亡くしてから鬱々とした日々を過ごしていた篁は、ある日、事故の起こった古井戸があの世と繋がっていることに気付きます。妹会いたさに井戸に飛び込んだ篁を待っていたものは...というお話です。

小野篁は生存中から何かと怪しい噂の絶えなかった人です。昼は宮廷に出仕して天皇に仕え、夜は地獄へ降りていって閻魔大王の秘書をしていたとか、異母妹と恋愛関係にあったなど様々な記録が残されているようです。
征夷大将軍 坂上田村麻呂は、皆さんもご存じのように蝦夷討伐などで有名ですね。(教科書にもあるように、この時代の京の人間は蝦夷を恐ろしい野人か何かのよう思っていました。)死後も都を守るようにと天皇が命じため、田村麻呂は甲冑姿に剣を持たされた直立姿勢のまま埋葬されました(そのために、死後も休めなかったとか)。そういった史実(?)がこの物語の下敷きになっています。
作者は京都生まれの京都育ち。歴史的な伝説や口承を身近に感じながら育ったとのことで、何千年も前に起こったことが、つい最近の事のように描かれています。

子供向けの作品ですので平仮名は多いですが、人間を食べる鬼が出てきたり鬼のイラストがちょっと怖かったりするので(大人から見たらそんなに怖くないのですが)、小学校低学年だと怖がるかもしれません。平易な文体で書かれていますが、読者をぐんぐん惹きつける表現力やストーリー展開はお見事です。これがプロの実力なのでしょうか。そして何よりも、ベストセラー作家のようなあざとさのない点が良かったです。作者は受け狙ったり、小手先の技巧を凝らしたりすることなく、子供たちに語り伝えたいお話を素直に丁寧に書いています。
ちょっぴりホロ苦テイストなので、大人にもお薦めです。どこまでも冷徹な武人の田村麻呂が、めちゃくちゃカッコいいです。太田大八さんが描く和風な挿絵もこの作品に良く合っています。
最近はファンタジーを読んでいても白けてしまうことが多いのですが、この本は結構、物語の世界に入り込めました。

ただ、個人的に鬼とか黄泉の国とか、そういう設定が苦手なので、☆は一つ減らさせていただきました。また、主人公の篁(たかむら)を取り巻く大人の事情や政治的な情報もないほうが、子供的には楽しめるのではないかと思いました。

レビューの冒頭で「目立たない」と書きましたが、この本は「第三回児童文学ファンタジー大賞」を受賞しているみたいです。もしかしたら有名な方なのかもしれません。適当でスミマセン。

総件数:1件

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